時のしるし1【現代文明 その始まりと終わり】

 

 現代文明には、私たちの知らない隠れた裏の姿があります。聖書はその現代文明の源流から終末までを前もって預言し、この文明の正体を暴いてます。歴史を振り返りながら、それを検証して行きましょう。

 

現代文明の源流 古代バビロン文明

 

 現代文明の源流をさかのぼると、シュメール(バビロン)という文明に突き当たります。それは世界最古の文明です。この文明から始まって、エジプト文明、インダス文明、黄河文明が影響を受けて発展して行ったのです。

 このバビロン文明発祥のものといえば、私たちの生活におなじみの物が沢山あります。例えば、科学、数学、天文学、文字、金銭、暦、印鑑、 魔術、 占い、偶像礼拝など、ふと見回せば、私たちの生活に今もなお根付いているものばかりです。 

 この古代文明は、聖書の記述にはあったものの、長い間忘れ去られ、一時は「実在しない神話」とさえ思われていたものです。しかし、十九世紀の考古学者たちの発掘によって、神話だったはずの古代バビロンの遺跡が次々と発見され、バビロン文明の存在が証明されました。こうして改めて聖書の記述の正しさが明らかにされたのです。

 

バビロンとはどんな文明か

  

 さて、全地は一つのことば、一つの話しことばであった。

そのころ、人々は東のほうから移動して来て、シヌアルの地に平地を見つけ、そこに定住した。(創世記111−2節)

 

この「シヌアル」の地が「シュメール」の地です。その場所はメソポタミアです。メソポタミアとは、チグリス川とユーフラテス川の間の土地のことで、現在のイラクあたりの地域です。

 

 彼らは互いに言った。「さあ、れんがを作ってよく焼こう。」

 彼らは石の代わりにれんがを用い、粘土の代わりに瀝青を用いた。そのうちに彼らは言うようになった。

 「さあ、われわれは町を建て、頂が天に届く塔を建て、名をあげよう。われわれが全地に散らされるといけないから。」

 そのとき主は人間の建てた町と塔をご覧になるために降りて来られた。

 主は仰せになった。

「彼らがみな、一つの民、一つのことばで、このようなことをし始めたのなら、今や彼らがしようと思うことで、とどめられることはない。さあ、降りて行って、そこでの彼らのことばを混乱させ、彼らが互いにことばが通じないようにしよう。」

 こうして主は人々を、そこから地の全面に散らされたので、彼らはその町を建てるのをやめた。それゆえ、その町の名はバベルと呼ばれた。主が全地のことばをそこで混乱させたから、すなわち、主が人々をそこから地の全面に散らしたからである。

(創世記113−9節)

 

 この「バベル」の町が、バビロンの源流です。古代バビロンの人々は、神の領域である天に自力で上ろうと望み、一致団結して高い塔を作りました。現代でも、国が発達してくると高い塔が作られ、その高さを競っていますね。そのルーツはバベルの塔です。

 聖書によると、バベルの塔を建てるまで、世界の言語はたったひとつでした。もし世界の言語がたったひとつだったなら、意思疎通は非常に簡単だったことでしょう。互いに言葉の壁があれば、 一致が難しいからです。

 例えば、現代では英語が世界の共通語ですが、もし全世界の人が英語を話せたとしたら、世界中が簡単に意思疎通ができ、一致団結するのも容易なことでしょう。

 「神がバベルで言葉を混乱させなかったなら、世界はみんな一致していたはずなにに、神はひどいことをした」というような批判が聞こえてきます。言語が一つなら、世界は一家、人類はみな兄弟となり、世界は平和になるはずだ、と現代人は考えます。 実はかつてそれは実際に起こっていたのでした。 

 

世界の堕落

 

 「主は、地上に人の悪が増大し、その心に計ることがみな、いつも悪いことだけに傾くのをご覧になった。」(創世記6章11−13節)

 

 バベルの塔の時代の前に、全世界一言語の時代がありました。それがノアの時代です。この時代、言語はひとつでした。言葉の壁が無いので、悪はすぐに伝わり、全世界に悪の増大を引き起こしました。 

 ギリシャ神話などの古代神話のルーツは、この恐ろしい時代の残り香です。たいてい悪い神々が人間と交わり、この世界を戦いに溢れさせたという話です。それは、実はこの大洪水前の時代の恐ろしい世界のおもかげなのです。

 この時代、悪の感染に歯止めはかからず、信仰者たちは激減し、ついに神を信じる者はノアの家族しかいなくなりました。もしノアたちが滅んだら、神の信仰者は地上からひとりもいなくなる寸前となりました。そんな絶体絶命の時に、神はノアを箱船に入れて救い出し、悪の世界に大洪水という神のさばきを下しました。

 

世界最初の権力者

 

 ノアの大洪水の後、ノアの子孫は増えていきました。しかし、ノアの子孫に「ニムロデ」という人物が現れたのです。ニムロデは世界最初の権力者となり、この人物が「バベル」の町を建国しました。

 

 「クシュはニムロデを生んだ。ニムロデは地上で最初の権力者となった。彼は主のおかげで、力ある猟師になったので、「主のおかげで、力ある猟師ニムロデのようだ。」と言われるようになった。

 彼の王国の初めは、バベル、エレク、アカデであって、みな、シヌアルの地にあった。」(創世記10章8-10節)

 

  ニムロデの意味とは「我々は反逆しよう」という意味です。何に対してでしょう。彼は世界の頂点に立ち、神に反逆して、バベルの塔を建てたのです。ニムロデは権力者による一党独裁国家システムの創始です。ひとりの権力者を頭にヒエラルキーを作り、人間を上下で差別化し、上層部が下層部を支配するという構図を発明したのです。このピラミッド型システムは、今やどの国でも見られますが、その創始はニムロデです。バビロン文明の原型がこの一党独裁国家にあります。ですから、どの独裁者もみな、神に対する反逆者であり、世界征服を夢見て、力を行使する者なのです。また、ニムロデは自分を神とする宗教の創始となりました。全世界はニムロデを現人神として一致団結して神に反逆したのです。

 

神の解決策

 

 人々が一致団結すればもの凄い力になります。人々は神を目指してバベルの塔を作り始めました。神は、神の領域を犯してバベルの塔を作る人々の姿をご覧になり、このまま進んで行けば、彼ら自身にさばきをもたらすことを知っていました。神はその解決策として、人々の言語を混乱させました。 「バベル」とは、「混乱」という意味があります。また、「神の門」という意味もあります。神になろうとした人々にとって、ここは神への門でしたが、神にとっては言語の混乱という解決でした。

 民族ごとに言語が異なれば、言葉の壁が出来あがります。その壁を崩すには相当の時間がかかります。しかし、その壁は腐敗のスピードを遅らす効果も生み出します。たとえば、一部の国が腐敗して悪に染まったとしても、言語の壁によって、隣国はすぐに一致せず、対抗勢力になります。それぞれの国がヒエラルキーを持つので、全体の力関係がバラバラになり、世界が一気に悪に染まることを防ぎます。こうして神は、世界の防腐システムを作られました。

 こうして、ノアの息子セム、ハム、ヤペテから、それぞれの言語が派生し、それぞれの民族、国語に分かれていきました。それがセム語族、ハム語族、ヤペテ語族(インド・ヨーロッパ語族)となって、全地に散って行ったのです。言語学者たちも、その三つの語族による民族の分類法を認めています。 

 

バビロン文明病の症状

 

 このバビロン文明の流れは、後の新バビロニア帝国に受け継がれます。聖書には、バビロンに対する預言者イザヤの言葉が書かれています。預言者とは、イスラエル民族から常におこされ、神の言葉を預かって世界に向かって宣言する役割を持つ者です。(このイスラエル民族についての詳細は、時のしるし2をご覧ください)

 

 神は預言者イザヤにバビロンの未来を預言しました。

 

「こうして、王国の誉れ、カルデヤ人の誇らかな栄えであるバビロンは、神がソドム、ゴモラを滅ぼした時のようになる。」(イザヤ書1319節)

 

 これはバビロンに対する滅亡宣言です。当時のバビロンは当時世界最強で、最も豊かな国でした。それがソドムとゴモラのように荒廃するというのです。ソドムとゴモラは不品行の町で、神のさばきを受けて火と硫黄で焼き尽くされました。

 預言者イザヤは、強大なバビロン帝国の地が、いつか必ず神の怒りを受けて、人の住めない荒地になると宣言しました。この預言を聞いた人たちは、とうてい信じられなかったことでしょう。今で言えば、東京やニューヨークが砂漠になると言うようなものです。

 この預言の成就の結果は、今でも実際に見ることができます。バビロンのあった現在のイラクあたりの土地は荒れ果て、町は砂に埋もれ、長年の間忘れ去られました。

 

 環境省の平成7年の「環境白書」第1章第2節「古代文明と環境」には、古代バビロンの環境破壊の詳細が書かれています。また、バビロン文明の流れを受け継いだ、その後のギリシャ帝国もローマ帝国も、バビロン同様、環境破壊で滅亡の一途をたどったことも書かれていますので、参照下さい。

環境省平成7年環境白書 第1章2節:

http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h07/index.html

 

 バビロン帝国も、その影響を受け継いだ、ギリシャ帝国も、ローマ帝国も、この文明病の症状である環境破壊問題を解決できませんでした。その結果、どの帝国も国力の弱体化が起こって滅んだのです。

 これらの帝国の荒廃は、地球全体から見れば部分的であり、全世界的な問題にはなりませんでした。しかし、その流れを受け継いだ現代文明はどうでしょうか。

 ルネッサンス以降、世界全体がこのバビロン文明を発展させて来たのです。そして、現代のキーワードは「グローバル化」です。世界中が、バベルの時代のように、統一を目指しているのです。

 現在、世界的な環境破壊が起こり、異常気象、人口爆発、土壌汚染、大気汚染、放射能汚染など、問題が山積しています。その影響は年々あらわになっています。これらはこの文明の生み出した醜い産物です。もはや人間の知恵ではとうてい回復ができない所まで、問題が大きくなって来ていることは、誰の目にも明らかです。 まさに、バベルの人々に神がおっしゃった言葉、「今や彼らがしようと思うことで、とどめられることはない」という地点にまで達しています。

 しかし、現代人の目は現実を直視するのではなく、天を見上げ、ロケットを打ち上げ、宇宙の果てまで進もうとし、神の領域を目指して名をあげるために何でもします。それに、反対する者はだれひとりいません。今や、科学の進歩や宇宙開発に対して反対する勢力があるでしょうか。貧しい国でさえも、世に名を挙げるために全力を注いています。たとえ世界が飢えていても、環境汚染がひどくても、それに対応するよりも、見込みのない夢の宇宙開発などに大金が投じられるのです。

 しかし、このような状態には限界がやって来ます。文明の発展が加速すればするほど、地球全体の環境破壊が進むのです。科学技術力で何とかしようとしても、もはや焼け石に水です。このまま行けば人類の生存の危機が訪れると、科学者たちでさえ予想し、恐ろしい警告をする時代になりました。しかし、それはもともと、このバビロン文明病特有の症状なのです。

  

バビロン復興の預言

 

 聖書は、このバビロン文明の最初から最後までの運命を、実は昔から宣言しています。旧約聖書のダニエル書には、バビロン文明がたどる道すじがすべて預言されているのです。そして、その預言通りに、実際に歴史は流れて来たのです。

  神は「時のしるし」として、この文明の正体、この文明の産み出す物、この文明の終わり方をあらかじめ最初から教えているのです。それはなぜでしょうか? それは人が、自分を知り、神を知るためです。

 

 ダニエル書の著者は預言者ダニエルです。彼は神の民ユダヤ人でした。当時、イスラエルの国はバビロン帝国に完敗し、その民は捕囚となってバビロンへ連れて行かれました。これが有名なバビロン捕囚です。その捕囚の民の中にダニエルがいたのです。ダニエルは信仰深いだけでなく、神の預言者でもありました。彼はバビロン王に仕える者となりました。

 

  ある日、バビロンの王は夢を見ました。その夢を、ダニエルが解き明かしたのですが、それは、このバビロン文明が、どのように変身して進み、どのような終わり方をするのか、という預言でした。当時の世界最高権力者であるバビロン帝国の王に対し、ダニエルは臆することなく、この神のご計画を明らかにしたのです。

 

 その預言の書かれているダニエル書を二ヶ所読んでみましょう。

 

 ダニエルは王に答えて言った。「王が求められる秘密は、知者、呪文師、呪法師、星占いも王に示すことはできません。しかし、天に秘密をあらわすひとりの神がおられ、この方が終わりの日に起こることをネブカデネザル王に示されたのです。

 あなたの夢と、寝床であなたの頭に浮かんだ幻はこれです。王さま。あなたは寝床で、この後、何が起こるのかと思い巡らされましたが、秘密をあらわされる方が、後に起こることをあなたにお示しになったのです。この秘密が私にあらわされたのは、ほかのどの人よりも私に知恵があるからではなく、その解き明かしが王に知らされることによって、あなたの心の思いをあなたがお知りになるためです。

 王さま。あなたは一つの大きな像をご覧になりました。見よ。その像は巨大で、その輝きは常ならず、それがあなたの前に立っていました。その姿は恐ろしいものでした。その像は、頭は純金、胸と両腕とは銀、腹とももとは青銅、すねは鉄、足は一部が鉄、一部が粘土でした。

 あなたが見ておられるうちに、一つの石が人手によらずに切り出され、その像の鉄と粘土の足を打ち、これを打ち砕きました。そのとき、鉄も粘土も青銅も銀も金もみな共に砕けて、夏の麦打ち場のもみがらのようになり、風がそれを吹き払って、あとかたもなくなりました。そして、その像を打った石は大きな山となって全土に満ちました。

 これがその夢でした。私たちはその解き明かしを王さまの前に申し上げましょう。

 王の王である王さま。天の神はあなたに国と権威と力と光栄とを賜い、また人の子ら、野の獣、空の鳥がどこに住んでいても、これをことごとく治めるようにあなたの手に与えられました。あなたはあの金の頭です。

 あなたの後に、あなたより劣るもう一つの国が起こります。次に青銅の第三の国が起こって、全土を治めるようになります。

 第四の国は鉄のように強い国です。鉄はすべてのものを打ち砕いて粉々にするからです。その国は鉄が打ち砕くように、先の国々を粉々に打ち砕いてしまいます。

 あなたがご覧になった足と足の指は、その一部が陶器師の粘土、一部が鉄でしたが、それは分裂した国のことです。その国には鉄の強さがあるでしょうが、あなたがご覧になったように、その鉄はどろどろの粘土と混じり合っているのです。

 その足の指が一部は鉄、一部は粘土であったように、その国は一部は強く、一部はもろいでしょう。鉄とどろどろの粘土が混じり合っているのをあなたがご覧になったように、それらは人間の種によって、互いに混じり合うでしょう。しかし鉄が粘土と混じり合わないように、それらが互いに団結することはありません。

 この王たちの時代に、天の神は一つの国を起こされます。その国は永遠に滅ぼされることがなく、その国は他の民に渡されず、かえってこれらの国々をことごとく打ち砕いて、絶滅してしまいます。しかし、この国は永遠に立ち続けます。

 あなたがご覧になったとおり、一つの石が人手によらずに山から切り出され、その石が鉄と青銅と粘土と銀と金を打ち砕いたのは、大いなる神が、これから後に起こることを王に知らされたのです。その夢は正夢で、その解き明かしも確かです。」(旧約聖書ダニエル書2章27-45節)

 

 さて、一度読んだだけでは理解が難しい夢ですが、その解き明かしは、別の箇所にあるダニエルの夢と一緒に見ていくとと分かりやすくなります。

 

 バビロンの王ベルシャツァルの元年に、ダニエルは寝床で、一つの夢、頭に浮かんだ幻を見て、その夢を書きしるし、そのあらましを語った。ダニエルは言った。

 「私が夜、幻を見ていると、突然、天の四方の風が大海をかき立て、四頭の大きな獣が海から上がって来た。その四頭はそれぞれ異なっていた。

 第一のものは獅子のようで、鷲の翼をつけていた。見ていると、その翼は抜き取られ、地から起こされ、人間のように二本の足で立たされて、人間の心が与えられた。

 また突然、熊に似たほかの第二の獣が現われた。その獣は横ざまに寝ていて、その口のきばの間には三本の肋骨があった。するとそれに、『起き上がって、多くの肉を食らえ。』との声がかかった。

 この後、見ていると、また突然、ひょうのようなほかの獣が現われた。その背には四つの鳥の翼があり、その獣には四つの頭があった。そしてそれに主権が与えられた。

 その後また、私が夜の幻を見ていると、突然、第四の獣が現われた。それは恐ろしく、ものすごく、非常に強くて、大きな鉄のきばを持っており、食らって、かみ砕いて、その残りを足で踏みつけた。これは前に現われたすべての獣と異なり、十本の角を持っていた。

 私がその角を注意して見ていると、その間から、もう一本の小さな角が出て来たが、その角のために、初めの角のうち三本が引き抜かれた。よく見ると、この角には、人間の目のような目があり、大きなことを語る口があった。

 私が見ていると、幾つかの御座が備えられ、年を経た方が座に着かれた。その衣は雪のように白く、頭の毛は混じりけのない羊の毛のようであった。御座は火の炎、その車輪は燃える火で、火の流れがこの方の前から流れ出ていた。幾千のものがこの方に仕え、幾万のものがその前に立っていた。さばく方が座に着き、幾つかの文書が開かれた。

 私は、あの角が語る大きなことばの声がするので、見ていると、そのとき、その獣は殺され、からだはそこなわれて、燃える火に投げ込まれるのを見た。残りの獣は、主権を奪われたが、いのちはその時と季節まで延ばされた。

 私がまた、夜の幻を見ていると、見よ、人の子のような方が天の雲に乗って来られ、年を経た方のもとに進み、その前に導かれた。この方に、主権と光栄と国が与えられ、諸民、諸国、諸国語の者たちがことごとく、彼に仕えることになった。その主権は永遠の主権で、過ぎ去ることがなく、その国は滅びることがない。

 私、ダニエルの心は、私のうちで悩み、頭に浮かんだ幻は、私を脅かした。私は、かたわらに立つ者のひとりに近づき、このことのすべてについて、彼に願って確かめようとした。すると彼は、私に答え、そのことの解き明かしを知らせてくれた。

 『これら四頭の大きな獣は、地から起こる四人の王である。しかし、いと高き方の聖徒たちが、国を受け継ぎ、永遠に、その国を保って世々限りなく続く。』(ダニエル書7章節)

 

 このふたつの夢は、同じ事を別の形で預言しているのです。それはバビロン文明のたどる歴史です。下の図を見て下さい。ダニエルの預言によると、このバビロン文明は、人間の像のような形になっていて、頭から足の方向に時代が流れて行き、歴史がつづられて行くというのです。

 

 

 バビロン文明の姿は人の形です。それは人間中心の思想を持つ文明です。その最初の帝国は、この人間の像でいえば「金の頭」の部分です。ダニエルによれば、それはバビロンの王ネブカデネザル本人でした。ネブカデネザル王は独裁者でしたが、ダニエルの神に敬意を表しました。また、当時の遺跡を見れば、この帝国が非常に豪華だったことが分かります。この国には金のような輝きがあり、獅子のような威厳があったのです。神を敬う点でも、金のような価値を持っていました。ダニエルの夢の第一番目に登場する帝国は、「獅子」のような獣、金のようなバビロン帝国です。

 

 次に現れる第二番目の帝国は、人間の像でいえば「銀の腕と胸」の部分です。それは「熊」のような獣の国でもあります。実際にバビロン帝国の後、メデイアとペルシャという二つの国の連合が起こり、メディア・ペルシャ帝国が現れ、バビロン帝国を滅ぼしました。2本の手はふたつの国を表しています。

 

 その後に、第三番目に現れる帝国は、人間の像でいえば「青銅の腹ともも」の部分です。それはまた、「ひょう」のような獣と形容されています。実際にメディア・ペルシャ帝国は、アレキサンダー大王率いるギリシャ帝国に、あっという間に滅ぼされました。ギリシャ帝国は「ひょう」が走るように、すさまじい速さで地中海世界統一を果たしました。しかしアレキサンダー大王はわずか33才でバビロンで亡くなります。大王亡き後、その帝国は王の部下のアンティゴノス、プトレマイオス、セレウコス、 リシマコスの四人の将軍によって分割されます。 これが「四つの翼」です。

 

 第四番目に現れた最後の帝国は、人間の像でいえば、形容ができないほど「恐ろしい」獣でした。このバビロン文明は「金」から「鉄」に、その価値がどんどん劣化して行くのです。

 四つに分かれていた国々の後に、世界を征服したのはローマ帝国です。ローマ帝国は、ギリシャ文化をそのまま継承し、その強力な軍事力であらゆる国を次々と属州にし、重税を取り立てるシステムを作った非常に残酷な国でした。

 ローマは現代は、私たちにもおなじみのコンクリートを発明し、効率的な武器を発明しました。そこには以前の文明のような優美さはありません。まさに「鉄」のような力の帝国です。

 また、ローマは「皇帝」を神格化することで帝国を一致団結させる宗教政策を取り、皇帝礼拝を民に強要しました。ローマ帝国はまさにその源流のバビロンのニムロデを具現化したような国でした。

 

ローマ帝国の解体

 

 この第四番目の獣であるローマ帝国内で、キリスト教が広まり始めました。(キリストの十字架については「時のしるし5キリスト預言」をご覧ください)

 ローマ皇帝は、皇帝崇拝を拒否するキリスト教徒をひどく迫害しました。キリスト教徒は皇帝は神ではないと知っていたので、皇帝を批判したからです。独裁者は常に嘘を暴く者を粛正します。しかし、迫害すればする程、キリスト教は世界に広まり、ついにはローマ帝国の国教となります。

 AD392年、キリスト教がローマの国教になると、教会はローマ文明の源流であるバビロン発祥のものを排斥しました。科学技術の発展スピードは遅くなりました。なぜなら、聖書がバビロン文明を糾弾していたからです。もし、教会によるこのバビロン文明排斥運動がなかったなら、今より千年早く、産業革命が起こっていたかもしれません。見方を変えれば、この文明の発展の減速によって、地球環境はしばらく守られていたとも言えます。

 ローマ帝国自体は、それまでの環境破壊による国力の衰退、ローマ市民の道徳の腐敗により弱体化し、後に東ローマと西ローマに分かれます。まさにダニエルの人間の像の二本足のようにです。大帝国は崩れ去り、バビロン文明は滅亡したかのように見えました。しかし、ダニエルの預言によると、バビロンがそこで滅ぶことは無いのです。

 

ルネッサンスの真の意味

 

 現代の「ルネッサンス」の言葉のイメージは、「文明の曙」「暗黒時代の夜明け」「自由・解放」といった非常に好意的なものではないでしょうか。逆に、「中世」という言葉のイメージは、「魔女裁判」「科学への迫害」「迷信」「暗黒」といった非常に悪いものばかりです。現代の視点から中世を振り返れば、 中世は暗黒時代で、ルネッサンスは素晴らしい時代の夜明けに見えます。しかし、聖書を通して見ると、そうではない逆の面が見えて来るのです。

 

 教会によるバビロン文明排斥の結果、ヨーロッパではギリシャローマ文化は衰退しました。しかし、ヨーロッパでは影を潜めたギリシャローマ文化は、イスラム帝国に流れ、発展して行ったのです。時が経ち、ローマ教会は民衆から聖書の真理を隠し、本来のキリスト教とは全く違った教えを教え始めました。

 11世紀に、聖地エルサレムを異教徒から奪還するという名目で、十字軍遠征が起こりました。しかし、十字軍が中東で見たものは、ギリシャ・ローマ文化を発展させて高度な文明を誇っていたイスラム帝国でした。彼らは母国に戻り、かつて自分たちが封印したギリシャ・ローマ文化を再発見し始めたのです。これがきっかけとなって、14世紀に「ルネサンス」が起こるのです。

 ルネサンスとは「再生」(re- 再び + naissance 誕生)という意味ですが、何の再生かというと、古代ギリシャ・ローマ文化の復興という意味です。そして、それと同時に人文主義(ヒューマニズム)も復活しました。ヒューマニズムというと聞こえは良いのですが、実は人間が神のようになるというバビロン的な考えが根底にあるのです。

 ヨーロッパは、かつて封印されていたローマ文化をどんどん復興して行きました。こうして眠っていた第四の獣ローマが息を吹き返し始めたのです。そして、次第にキリスト教に対する攻撃が始まりました。

 つまるところ、ルネッサンスとは、バビロン文明復活の最初の一歩でしたが、それと同時に、ヨーロッパで聖書が印刷されるようになり、プロテスタント宗教改革が起こりました。ローマ教会はプロテスタントを迫害したので、プロテスタントの人々はヨーロッパから逃れて、新天地アメリカに向かって行きました。

 

 18世紀にイギリスで産業革命が起こると、世界中がそのスタイルに追従しました。日本でも明治維新の時に「文明開化」ともてはやされましたが、どの国もその文明に魅了されました。バビロン文明の知識が発展し、機械による大量生産、大量消費が可能となり、魔法のように生活が向上し始めました。しかし、この文明には大きな欠点がありました。それは動力源となる大量のエネルギー資源がなければ維持不可能なのです。石炭から石油へと、エネルギーの依存は変わりました。

 いったん資源依存の歯車が回り始めると、もはや後戻りはできません。いなごのように資源を食い尽くす時代が始まりました。人々は便利さから機械を作り、必要なエネルギー量は年々増して行きました。しかし、もし資源が枯渇すれば、それはすぐに死活問題になります。いつの間にか世界は、資源争奪のために戦うようになりました。

 人は科学の発展によって恩恵もたくさん受けましたが、大量破壊兵器や原爆も生み出しました。20世紀の戦争は、過去のどんな戦争とも比べられない程の大きな犠牲が起こりました。

 さらに、魔法の科学の産物は、思いもよらぬ環境破壊を地球上に生じ始めました。公害、水質汚染、オゾン層の破壊、土壌汚染、動植物の絶滅など、便利さと引き換えに、数えきれない程多くのものが失われました。科学技術が人類の未来を明るくするという信仰は、今では疑われ始めています。しかし、歯止めのない要求は、ますますエスカレートし、止まることを知りません。この環境破壊の症状は、バビロン文明の特徴です。この文明は破壊は得意でも、癒すことはできないのです。聖書は最初から、この文明が間違いであることを語っているのです。

 かつてヨーロッパ諸国はキリスト教国でしたが、今やキリスト教への信仰心を失い、急速に逆方向に向かっています。かつてキリスト教徒を迫害したローマ時代の人々と同じような精神構造に近づいているのです。いつかヨーロッパは、かつての残忍なローマ帝国の姿に完全に戻ると預言されています。それが第四の獣の復活と最後の時代です。

 

足の指先の時代

 

 第四の獣ローマの最後の姿は、ダニエルの預言によると、人間の像の足の指先の部分の時代です。足の長さに比べて、指先は短いのです。それはこの時代が短いことを指しています。

 第二次世界大戦後、長らくバラバラだったヨーロッパの国々が、かつてのローマ帝国のように統一を目指して協力し始めました。ナポレオンやヒットラーのような独裁者が武力で征服しようとしても失敗しましたが、今度は民衆みずからが統一を望んだのです。

 

 こうして、聖書の預言通り、このバビロン文明は、(1)バビロン帝国=頭→(2)メドペルシャ帝国=腕と胸→(3)ギリシャ帝国=腹ともも→(4)ローマ帝国(足と足先)と姿を変えて現在に至っています。そして、これから現れる復活のローマ帝国は、足の指先です。ローマ帝国はいまだ終わっていないのです。神は、このバビロン文明のタイムリミットを前もって決められているのです。それがダニエルの人間の像のタイムテーブルです。人間中心のバビロン文明は、終わりの時代に近づいています。

 ヨーロッパは今、足の指先の獣の姿に変身中の「さなぎ」のようです。人々はキリスト教を捨て、来るべき新ローマ皇帝のために舞台を整えているのです。

 

(未来の足の指の時代については、「時のしるし4様々な前兆と大患難時代」の項目をお読みください)

 

バベルの源流「エデン」

 

 では、なぜ神はバビロン文明を非難するのでしょうか。それはその産み出す醜悪な発明だけでなく、バビロン文明の根底の概念が、人を神の座に置き換え、自らエデンの園を作ろうと努力する無謀な試みだからです。それは結局は人を幸せにはしないのです。なぜなのでしょうか? その答えは、その思想のルーツが書かれた、創世記の冒頭のアダムとエバの堕落にあります。

 

 さて、神である主が造られたあらゆる野の獣のうちで、蛇が一番狡猾であった。

 蛇は女に言った。「あなたがたは、園のどんな木からも食べてはならない、と神は、ほんとうに言われたのですか。」

 女は蛇に言った。「私たちは、園にある木の実を食べてよいのです。しかし、園の中央にある木の実について、神は、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ。』と仰せになりました。」

 そこで、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。あなたがたがそれを食べるその時、あなたがたの目が開け、あなたがたが神のようになり、善悪を知るようになることを神は知っているのです。」

 そこで女が見ると、その木は、まことに食べるのに良く、目に慕わしく、賢くするというその木はいかにも好ましかった。それで女はその実を取って食べ、いっしょにいた夫にも与えたので、夫も食べた。

 このようにして、ふたりの目は開かれ、それで彼らは自分たちが裸であることを知った。そこで、彼らは、いちじくの葉をつづり合わせて、自分たちの腰のおおいを作った。(創世記31-7節)

 

 かつて、人間は今のような状態にはいませんでした。人は神と共にエデンの園にいたのです。その時、人は罪を犯すことも、死ぬこともありませんでした。そこには真の幸せがあったのです。問題も悲しみも苦しみもありませんでした。

 神を憎むサタンは、堕落して天から落とされた存在です。サタンとは「神の敵」という意味です。そして、いつか罪の裁きを受けなければならない者です。サタンは、神が愛している人間を堕落させ、道連れにし、神を悲しませようとしたのです。

 そしてサタンは蛇に姿を変えて、エバに近づきました。

 蛇はエバに、人も「神のようになれる」と嘘をついて、誘惑しました。人の自負心に火をつけたのです。人はその誘いにのって罪を犯してしまいました。

 人は、罪を犯したのは誘惑した者が悪いのであって、誘惑された者は悪くないのではと思うかもしれません。しかし、もし彼らが神になりたくないと本気で思っていたのなら、たとえ誘惑されたとしても、禁じられた木の実を食べることはしなかったでしょう。彼らは神になりたいと思う心があったので、食べるという行動に出たのです。それが罪でした。

 こうして、人は神のことばよりも、悪魔を信じて罪を犯しました。その時、人は神を裏切ったのです。これが堕落です。悪魔は喜びました。神の世界を傷つけることができたからです。

 この時から、人はエデンの園を追放され、いのちの木への道を失い、死ぬことになったのです。そして、人は霊的にはサタンの支配下に入ることになりました。

 さて、人は悪魔の言葉通りに善悪の木の実を食べたのに、神のようにはなれず、神の警告通りに、死ぬ運命になりました。人は悪魔に裏切られたのです。そして、罪を犯した人間は、義なる神のもとにいられなくなり、神の元へ戻る道も失われたのです。人はいのちの木から離され、そのいのちを失うことになったのです。

 

 以来、人は自力で神のようになろうと奮闘し始めました。それが文明の始まりです。バビロン文明の源流は、このエデンの園の事件に見られます。それは神を退けて、自ら神のようになろうとし、エデンのようなユートピアを自力で作ろうとする努力と試みです。 

 しかし、人は神にはなれません。罪を犯す神などありえないからです。悪魔は人間に、神への道を目指させ、罪を犯させ、神から引き離し、滅ぼし、神を傷つけたいだけなのです。人を愛しているのではなく、実は誰よりも人を憎んでいるのです。人を罪に誘っておいて、人が罪を犯した途端に、その罪を責め、共に罰を受けさせようとするのがサタンなのです。

 

 つまり、サタンの誘惑に乗ったこのバビロン文明の行き着く先は滅びです。それはすでに定められています。

 聖書の最後の書、「ヨハネの黙示禄」には、このバビロンの最後の姿が描かれています。こうして、創世記から始まったバビロン文明の時代は終わるのです。

 

 彼(御使い)は力強い声で叫んで言った。

 「倒れた。大バビロンが倒れた。そして、悪霊の住まい、あらゆる汚れた霊どもの巣くつ、あらゆる汚れた、憎むべき鳥どもの巣くつとなった。それは、すべての国々の民が、彼女の不品行に対する激しい御怒りのぶどう酒を飲み、地上の王たちは、彼女と不品行を行ない、地上の商人たちは、彼女の極度の好色によって富を得たからである。」

(ヨハネの黙示禄18章2〜3節)

 

 

 神は創世記の時代に、このバビロン文明に対して、ある民族を立てられました。それがイスラエル(ユダヤ人)です。イスラエルの民に与えられた神の律法の預言、そして、そのたどった歴史は、このサタンの文明に対抗する神の勢力です。その歴史を見ると、この民自体が、「時のしるし」であることが分かります。終末時代に、バビロン文明が倒れるその時、神の民イスラエルは復興し、聖書は成就すると預言されていまです。その「時のしるし」がイスラエルの復興です。それは私たちは今、この目で見ている中東のイスラエルが関係しています。

 (詳しくは「時のしるし2 イスラエル復興の歴史」をご覧ください。

 

 

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